産経ニュース2011.1.28 03:03より
初代内閣安全保障室長・佐々淳行
韓国大統領の海賊退治を見習え
韓国海軍がつい最近、ソマリア沖で海賊に乗っ取られていた韓国化学物資運搬船、「三湖ジュエリー号」を急襲し、海賊8人を射殺して、人質21人全員を救出(1人負傷)し、船を奪還した。
ソマリア沖海賊の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)は関係諸国の頭痛の種だ。世界経済にかかわる海上交通安全上の脅威であり、石油輸送の大動脈を常に脅かす厄介な危機である。
だが、公海上での平時の武力行使は、国際法上の疑義もあり、米海軍でさえ二の足を踏む難題だ。拉致・不法監禁された人質の人命を尊重しつつ武力行動で救出することは、極めて難しい作戦だからだ。
≪敬意を表したい勇気と練度≫
「あさま山荘事件」の39周年記念日が間もなく巡ってくる。強行突入を決定し命令した指揮官として、自分の命令により人質が死亡したら、部下が殉職したらと思い悩み、結果的に2人殉職し、片目失明2人を含め24人の隊員が重軽傷を負ったときの血も凍るような喪失感を体験した筆者は、同じ苦悩を味わったに相違ない李明博韓国大統領の勇気に、そして、今回の「アデン湾の夜明け」作戦を成功させた韓国海軍特殊部隊の練度に心から敬意を表したい。
史上名高い人質救出作戦としては、
・モロッコで米国人母子が拉致・監禁されたとき、大西洋艦隊を出動、海兵隊を上陸させて激しい銃撃戦の末にサルタンを捕らえ、人質を救出した
「風とライオン事件」や、
・パレスチナ・ゲリラがフランス航空機をハイジャック、ウガンダのエンテベ空港に乗客乗員を人質に籠城し、獄中のテロリスト釈放を要求したとき、イスラエル空挺部隊が決行して大成功した「エンテベ作戦」がある。
・西独(当時)赤軍バーダー・マインホフ一味がルフトハンザ機を乗っ取り、ソマリアのモガディシオ空港で機長を殺害、乗客乗員を人質に獄中の同志の釈放を要求したのに対し、国境警備隊GSG9の精鋭が強行突入し解決した
「モガディシオ事件」、
・ホメイニ師派の武装勢力が占拠したロンドンのイラン大使館に、SAS特殊部隊を突入させてパーレビ国王派の館員を救い出した
「イラン大使館占拠事件」も知られている。
これらの作戦を苦渋の末に決断して人質を救出した、
セオドア・ルーズベルト米大統領、ラビン・イスラエル首相、
シュミット西独首相、サッチャー英首相は尊敬に値する危機管理指導者たちで、李大統領も今回の作戦により、その“殿堂入り”を果たした。
≪危機管理宰相の殿堂に入れず≫
翻って日本の政治指導者たちはというと、
・クアラルンプール事件の三木武夫首相、
・ダッカ事件の福田赳夫首相はともに、
・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件では、
菅直人首相、仙谷由人前官房長官がフジタの日本人社員4人が報復であるかのように拘束されたとたん、
中国を恐れて船長を閣議決定もせずに
超法規的に釈放した。これでは、“殿堂入り”は無理だ。
日本にとって、
中東原油のシーレーン(海上交通路)の安全は、“刀(かたな)にかけても守るべき”生命線だ。韓国海軍の実力を思い知らされた海賊たちは、韓国船を避け従前にも増して日本の船を狙ってきかねない。
海賊問題は「今、そこにある危機」なのである。
クアラルンプールに本部を置く国際海事局の海賊情報センター発表によれば、
・2010年は、世界で53隻の船が乗っ取られ、1181人が人質になり、死者8人を出すという、
・1991年に海賊被害の統計を取り始めてから最悪の年となった。
・発生地域としては、ソマリア沖が49隻と突出し、取られた人質は1016人、
・2010年末時点でまだ638人が解放されていない。
・日本関係船舶も05年から09年にかけて44隻が襲撃され、昨年も、世界で4番目に多い23隻が海賊被害に遭っている。
≪海自に海上警備行動発令せよ≫
では、そんな日本の政府が取っている海賊対策はどうか。
中東原油の海上ルートが日本経済の命脈を握り、アデン湾を航行する日本関係船舶は
年間2000隻に上るのに、全く消極的で、外務省は船会社に
「不審船はジグザグ航行で振り切れ」とか
「甲板の手すりに鉄条網を巻け」とか言っているだけだという。
08年に中国漁船「天裕8号」が奪取されたとき、日本人船長の解放は3カ月後だった。
昨年10月に乗っ取られた日の出郵船の貨物船は他船を襲う海賊船になり果てている。
海賊取り締まりは本来、海上警察たる海上保安庁の任務で、その警察力強化はむろん重要だ。同時に、
海賊対処法に基づきアデン湾で200回以上船舶の護衛に当たっている
海上自衛隊に「海上警備行動」を発令、
警察活動としての武器使用規定を定め
「海賊船は撃て」と命令することも急務だ。
菅首相は民主党内の“内ゲバ”をやめ、李大統領を見習って、明日にも起き得る海賊事件に断固対処する覚悟を固めてほしい。
施政方針演説を聞いても市民社会あって国家なしの観ありだ。
(参考:政治学者 松下圭一氏の思想;主役は「国民」では無く国籍の関係ない「市民」とする
外国人参政権推進する
「最小不幸社会」の実現を目指す売国思想)
国民を守るのは首相の責務である。(さっさ あつゆき)
初代内閣安全保障室長・佐々淳行
韓国大統領の海賊退治を見習え
韓国海軍がつい最近、ソマリア沖で海賊に乗っ取られていた韓国化学物資運搬船、「三湖ジュエリー号」を急襲し、海賊8人を射殺して、人質21人全員を救出(1人負傷)し、船を奪還した。
ソマリア沖海賊の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)は関係諸国の頭痛の種だ。世界経済にかかわる海上交通安全上の脅威であり、石油輸送の大動脈を常に脅かす厄介な危機である。
だが、公海上での平時の武力行使は、国際法上の疑義もあり、米海軍でさえ二の足を踏む難題だ。拉致・不法監禁された人質の人命を尊重しつつ武力行動で救出することは、極めて難しい作戦だからだ。
≪敬意を表したい勇気と練度≫
「あさま山荘事件」の39周年記念日が間もなく巡ってくる。強行突入を決定し命令した指揮官として、自分の命令により人質が死亡したら、部下が殉職したらと思い悩み、結果的に2人殉職し、片目失明2人を含め24人の隊員が重軽傷を負ったときの血も凍るような喪失感を体験した筆者は、同じ苦悩を味わったに相違ない李明博韓国大統領の勇気に、そして、今回の「アデン湾の夜明け」作戦を成功させた韓国海軍特殊部隊の練度に心から敬意を表したい。
史上名高い人質救出作戦としては、
・モロッコで米国人母子が拉致・監禁されたとき、大西洋艦隊を出動、海兵隊を上陸させて激しい銃撃戦の末にサルタンを捕らえ、人質を救出した
「風とライオン事件」や、
・パレスチナ・ゲリラがフランス航空機をハイジャック、ウガンダのエンテベ空港に乗客乗員を人質に籠城し、獄中のテロリスト釈放を要求したとき、イスラエル空挺部隊が決行して大成功した「エンテベ作戦」がある。
・西独(当時)赤軍バーダー・マインホフ一味がルフトハンザ機を乗っ取り、ソマリアのモガディシオ空港で機長を殺害、乗客乗員を人質に獄中の同志の釈放を要求したのに対し、国境警備隊GSG9の精鋭が強行突入し解決した
「モガディシオ事件」、
・ホメイニ師派の武装勢力が占拠したロンドンのイラン大使館に、SAS特殊部隊を突入させてパーレビ国王派の館員を救い出した
「イラン大使館占拠事件」も知られている。
これらの作戦を苦渋の末に決断して人質を救出した、
セオドア・ルーズベルト米大統領、ラビン・イスラエル首相、
シュミット西独首相、サッチャー英首相は尊敬に値する危機管理指導者たちで、李大統領も今回の作戦により、その“殿堂入り”を果たした。
≪危機管理宰相の殿堂に入れず≫
翻って日本の政治指導者たちはというと、
・クアラルンプール事件の三木武夫首相、
・ダッカ事件の福田赳夫首相はともに、
・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件では、
菅直人首相、仙谷由人前官房長官がフジタの日本人社員4人が報復であるかのように拘束されたとたん、
中国を恐れて船長を閣議決定もせずに
超法規的に釈放した。これでは、“殿堂入り”は無理だ。
日本にとって、
中東原油のシーレーン(海上交通路)の安全は、“刀(かたな)にかけても守るべき”生命線だ。韓国海軍の実力を思い知らされた海賊たちは、韓国船を避け従前にも増して日本の船を狙ってきかねない。
海賊問題は「今、そこにある危機」なのである。
クアラルンプールに本部を置く国際海事局の海賊情報センター発表によれば、
・2010年は、世界で53隻の船が乗っ取られ、1181人が人質になり、死者8人を出すという、
・1991年に海賊被害の統計を取り始めてから最悪の年となった。
・発生地域としては、ソマリア沖が49隻と突出し、取られた人質は1016人、
・2010年末時点でまだ638人が解放されていない。
・日本関係船舶も05年から09年にかけて44隻が襲撃され、昨年も、世界で4番目に多い23隻が海賊被害に遭っている。
≪海自に海上警備行動発令せよ≫
では、そんな日本の政府が取っている海賊対策はどうか。
中東原油の海上ルートが日本経済の命脈を握り、アデン湾を航行する日本関係船舶は
年間2000隻に上るのに、全く消極的で、外務省は船会社に
「不審船はジグザグ航行で振り切れ」とか
「甲板の手すりに鉄条網を巻け」とか言っているだけだという。
08年に中国漁船「天裕8号」が奪取されたとき、日本人船長の解放は3カ月後だった。
昨年10月に乗っ取られた日の出郵船の貨物船は他船を襲う海賊船になり果てている。
海賊取り締まりは本来、海上警察たる海上保安庁の任務で、その警察力強化はむろん重要だ。同時に、
海賊対処法に基づきアデン湾で200回以上船舶の護衛に当たっている
海上自衛隊に「海上警備行動」を発令、
警察活動としての武器使用規定を定め
「海賊船は撃て」と命令することも急務だ。
菅首相は民主党内の“内ゲバ”をやめ、李大統領を見習って、明日にも起き得る海賊事件に断固対処する覚悟を固めてほしい。
施政方針演説を聞いても市民社会あって国家なしの観ありだ。
(参考:政治学者 松下圭一氏の思想;主役は「国民」では無く国籍の関係ない「市民」とする
外国人参政権推進する
「最小不幸社会」の実現を目指す売国思想)
国民を守るのは首相の責務である。(さっさ あつゆき)