2011年1月7日金曜日

目覚めよ日本、「中禍」を見抜け 櫻井よしこ氏×渡辺利夫氏

渡辺利夫・拓殖大教授と対談する櫻井よしこ氏
渡辺利夫・拓殖大教授と対談する櫻井よしこ氏
産経ニュース2011.1.3 07:00より
【新春正論対談】(上)目覚めよ日本、「中禍」を見抜け 櫻井よしこ氏×渡辺利夫氏
平成23年は前向きな展望が見いだせる年になるのか。日本再生に向けた精力的な言論活動が評価されて第26回正論大賞の受賞が決まったジャーナリストの櫻井よしこ氏と、アジアの経済と歴史の第一人者である拓殖大学学長の渡辺利夫氏が縦横に語り合った。日本外交はなぜ敗北を喫してしまうのか。その根本的な問題の背後にある精神の課題と、この先の展開を読むポイントが存分に示された熱い対談を再現した。(司会・構成 正論調査室次長 羽成哲郎)
--平成22年は民主党政権のもとで周辺国の攻勢を受け日本外交は次々と敗北する惨状を呈しました。どのように振り返りますか
櫻井 日本の国の形そのものが崩れてしまいそうだという危機感を持っています。
--何が根本的問題でしょうか
櫻井 普通の国家が備えている要件、外交力と軍事力を、戦後の日本が失ってしまったことに尽きると思います。端的にいえば憲法9条では国を守ることができないということで、いままさに憲法改正をすみやかに実行しなければならないと考えます。
もう一つの問題は教育です。日本の歴史をまともに教えられていませんから、尖閣諸島も北方領土の歴史も知らない人が多い。日本が邪悪な戦争をしたという戦後教育しか受けていません。道徳倫理教育、歴史教育の見直しが是非必要です。3番目は皇室の問題です。皇位継承を安定化させて、日本の文化や価値観の継承主体としての皇室をもり立てていく方法を考え、実現したいものです。この3つが平成23年以降の大きな課題と考えています。
渡辺 国益が毎日、毎時侵されているという気分です。国内問題は所得の再分配ですから、どの政策がいいのかどうかの決定的な基準はありません。ところが外交・安全保障は、判断に誤りがあれば国民の生命と財産は失われます。国家主権に対する国民の認識を高めなかったら、いったいどうなるのでしょうか。現在は外交・安全保障政策をきっかけに国論を変える千載一遇のチャンスなのではないか。今年がそういう年になってくれればいいと思います。
幻想を捨てよ
--個別のテーマをおうかがいします。中国に対して戦略的にどのように対応すればよいと考えますか
櫻井 少なくとも100年間、中国は一番の脅威だと認識することが、対応の第一歩です。中国問題はアジア、アメリカにとっても同様です。世界各国が100年間、中国とさまざまな交流をしながらも、国益をしっかり守っていく戦略をどのように構築するかが繁栄か衰退かの分かれ道になります。特に日本は地政学的にも、文化的にも、他の国々よりも影響を受けやすい位置にあります。事実、日本は戦後ずっと中国幻想を抱き続けてきました。中曽根康弘元首相のように素養のあるあの世代の方々であればあるほど、「論語」、孔子のような文化、文明が中国の実像だと思っています。
渡辺 そうですね。
櫻井 実は違います。国家基本問題研究所の中期プロジェクトとして中国研究のリポートをまとめ、文芸春秋から「中国はなぜ『軍拡』『膨張』『恫喝』をやめないのか」という本を出しました。この研究で非常に興味深いことがわかりました。
一つは中国の主張は現実と切り離され、彼らがこうあるべきだと思う欲望の図にすぎないということです。清朝末期に新しい華夷(かい)秩序=文末に用語解説=を突然つくってチベットや東トルキスタン、今のウイグルを中国の領土の一部だと言って、武力で押し通しました。南シナ海も東シナ海もそうです。中国が唱える文言が、現実や真実とは無縁の単なる主張にすぎないということに日本は目覚めて、中国の正体を見て対応しなければなりません。
渡辺 国益が毎日、毎時侵されているという気分です。国内問題は所得の再分配ですから、どの政策がいいのかどうかの決定的な基準はありません。ところが外交・安全保障は、判断に誤りがあれば国民の生命と財産は失われます。国家主権に対する国民の認識を高めなかったら、いったいどうなるのでしょうか。現在は外交・安全保障政策をきっかけに国論を変える千載一遇のチャンスなのではないか。今年がそういう年になってくれればいいと思います。
□幻想を捨てよ
--個別のテーマをおうかがいします。中国に対して戦略的にどのように対応すればよいと考えますか
櫻井 少なくとも100年間、中国は一番の脅威だと認識することが、対応の第一歩です。中国問題はアジア、アメリカにとっても同様です。世界各国が100年間、中国とさまざまな交流をしながらも、国益をしっかり守っていく戦略をどのように構築するかが繁栄か衰退かの分かれ道になります。特に日本は地政学的にも、文化的にも、他の国々よりも影響を受けやすい位置にあります。事実、日本は戦後ずっと中国幻想を抱き続けてきました。中曽根康弘元首相のように素養のあるあの世代の方々であればあるほど、「論語」、孔子のような文化、文明が中国の実像だと思っています。
渡辺 そうですね。
櫻井 実は違います。国家基本問題研究所の中期プロジェクトとして中国研究のリポートをまとめ、文芸春秋から「中国はなぜ『軍拡』『膨張』『恫喝』をやめないのか」という本を出しました。この研究で非常に興味深いことがわかりました。
一つは中国の主張は現実と切り離され、彼らがこうあるべきだと思う欲望の図にすぎないということです。清朝末期に新しい華夷(かい)秩序=文末に用語解説=を突然つくってチベットや東トルキスタン、今のウイグルを中国の領土の一部だと言って、武力で押し通しました。南シナ海も東シナ海もそうです。中国が唱える文言が、現実や真実とは無縁の単なる主張にすぎないということに日本は目覚めて、中国の正体を見て対応しなければなりません。
渡辺 まったく同感です。外から見ると大きなマーケット、大きな生産力、軍事力も格段に強化されています。超大国に向かって突っ走っているように見えます。だが、内からみると、これほど巨大な社会的矛盾を抱えた国も珍しい。本質は農村の貧困です。格差、資源エネルギー不足、環境破壊、少子高齢化、頭を抱えてしまうようなテーマが無数にあります。中国国内で公務執行妨害を伴う暴力事件が全国全土でどのくらい起こったかといえば、政府公表の統計でも年間10万件以上です。
櫻井 1日300件以上ということになります。すさまじいことです。
渡辺 もう一つ大きな問題は、内モンゴル、新疆ウイグル(東トルキスタン)、チベットはまったく異人種、異文化、異言語の地域です。深刻な格差と広大な領土、多種多様な異民族を抱えています。中国社会の安定化は気の遠くなるような難しいテーマです。大清帝国時代は華夷秩序の下で、領土とそこに住む住民の統治は任せるから、朝貢だけやってくれればいいという緩やかな関係でした。
櫻井 名目的な支配ですね。
渡辺 だからこそあれほどの大帝国が築けたわけです。悲劇的なことに、中華人民共和国はそこに国家概念を導入して、異民族の支配を厳しくやらざるを得なくなってしまいました。複雑な国をまとめ上げていくのにどうしても強固なナショナリズムが不可欠です。反日は永遠なるものです。
日本の指導者は何か起こると「冷静に、冷静に」と収めてしまう。ナショナリズムは完全にもう古い時代のものであるかのように思われています。その日本と、これから反日ナショナリズムをますますたぎらせていく国とが向かい合ったら、まず滅々たる結果とならざるを得ないと思います。
□帝国主義阻止の義務
櫻井 19世紀に世界各国は帝国主義の時代の流れの中にありました。その後、国際連合をつくって、新しい価値観で人類普遍の平等、自由、民主主義という理念を掲げてきました。ところが中国のみが1世紀以上も遅れて中華帝国主義の覇権の確立にひた走り、なお驀進(ばくしん)しようとしているわけです。19世紀型の重商主義、植民地主義をこの21世紀の世界に持ち込ませてはならないのは当然です。軍事力を中心軸として中国を思いとどまらせることができるような体制をつくらなければいけないと考えているのが他の諸国です。日本だけが違います。
--中国の拡張主義は厳然と封じ込めていくべきであるということですか
櫻井 今の中華的植民地主義は、かつてのナチス・ドイツと非常によく似ています。まず政治は一党支配です。経済は国家独占資本主義のかたちです。日本にはナチス・ドイツと手を結んでしまったという歴史的な失敗があります。過去にそのような失敗をした国であればこそ、なおさら、日本はその失敗から学んで中国の理不尽な拡張をやめさせる責任があります。
渡辺 ナショナリズムは帝国主義には不可欠の要素です。それを周辺諸国に拡大しようとしているのが中国です。ポストモダニズムとは国家とか共同体に価値を見いださない考え方です。国家の観念は非常に希薄になっていきます。国境という概念も曖昧になり、むしろ無効化したほうがいいという思想となっています。民主党政権になってからは、そういう思想の持ち主が政権の中枢部に座っています。ここが非常に危うい。国家と言いたくないから「市民社会」、国民と言いたくないから「市民」と言う。
日本はポストモダニズムで、周辺の国々はまさにモダニズムそのもの。モダニズムの海の中にポストモダニズムの日本がちょこんと乗っかって涼しい顔で舟をこいでいる。こういう非常に奇妙な構図です。今の極東アジアの地政学的構図とは、開国・明治維新から日清・日露あたりの緊迫の極東情勢とよく似ています。しかもあの時代は飛行機もなく、艦船の時代です。今はもう飛行機を通り越して核ミサイルの時代になっているわけです。現在のほうがもっと危険です。
□憲法前文に頼るな
櫻井 渡辺さんのおっしゃるポストモダニズムがどこから来るかといえば憲法からでしょう。憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあります。世界は全部善なる国々で構成されていて、私たち日本が善い行いさえすれば問題はないのだと。
渡辺 戦後体制そのものですね。悪いのは日本だと。
櫻井 今の民主党政権の一つの際立った特徴は、現行憲法の日本否定の価値観に染まるあまり、おそらく日本を愛していないことだということです。
新しい華夷秩序
 渡辺氏の著作「君、國を捨つるなかれ」では「華夷秩序」は文明の中心であり、儒学、漢字、漢人をベースとした「華」と、それに劣って外にある「夷」で構成される国際秩序であり、服属する周辺諸国が中華帝国に朝貢するような価値の関係-と説明されている。しかし、服属あるいは同盟国であった周辺国が列強のアジア進出によって侵食されていく19世紀になって、清朝はチベットなどを武力で直接支配するよう乗り出した。櫻井氏らによる「中国はなぜ『軍拡』『膨張』『恫喝』をやめないのか」では「新しい華夷秩序」としてこの経緯と意味が詳述されており、現在の中国の外交政策に通じるものだとしている。



【新春正論対談】(下)誇れる国の礎 憲法、教育、皇室 櫻井よしこ氏×渡辺利夫氏


歴史観を見直せ
渡辺 日本を脅かす勢力が本格的に出てきたのは幕末以降です。ロシアの南下政策が近現代の日本にとっての決定的なテーマでした。日英同盟によってこれを食い止めました。もう一つは、ロシアに発した国際共産主義の波で、日米同盟によって食い止めることができました。日本は自由主義陣営の確たる国として参加できているという構図があったわけです。だが、このところ日米同盟は劣化し、名存実亡となる可能性があります。
櫻井 大東亜戦争こそ題材にして学ぶべきです。大東亜戦争は非常に悪い戦争で、日本は悪いことばかりしたとなっていますが、それは事実とはかけ離れていることを学びたいものです。
渡辺 アメリカにすり込まれました。
櫻井 確かに多くの失敗も犯して、敗れました。だが、その中にも日本人の立派な魂はありました。そうしたことを、歴史教育で一つ一つ具体的に教えていくときだと思います。山本七平賞を受賞された門田隆将さんの「この命、義に捧ぐ」という陸軍中将、根本博さんの物語があります。大戦後の国共内戦の際、日本から密航して台湾に行き、台湾軍を率いて戦って守り抜き、議をまっとうしました。結果、台湾は中国に取られないで済みました。
渡辺 そうですね。
櫻井 樺太・真岡にいた女性交換手たちはポツダム宣言受諾後も攻撃してきたソ連軍の捕虜にならないようにと自決して尊厳を守りました。日本人として立派に責務を果たし筋を通した事例は多くありました。何もかも日本が悪いというのは、勝者の見方です。
渡辺 不正で不道徳な戦いを日本がやって敗れた…。よくぞあそこまで日本人は染め上げられたという感じが私にはあります。


櫻井 では侵略戦争を称賛するのかという反論が出ると思いますが、侵略戦争かどうかというのは、それこそ「パール判事の日本無罪論」(*1)やアメリカの公使ジョン・マクマリーの「平和はいかに失われたか」(*2)、レジナルド・ジョンストンの「紫禁城の黄昏」(*3)など非常に多くのいい本があります。それらを読むことも含めての歴史教育が必要です。
渡辺 私は、子供のとき、甲府市で空襲を受けて今も体にやけどがあります。
櫻井 おいくつでしたか。
渡辺 6歳で鮮明に覚えています。戦争は敗者だけではなく勝者にもトラウマを残します。民間人を殺戮(さつりく)したことに対してアメリカ人の心は休まりません。
また、日本人が残虐の限りを尽くしたと主張しなければ抗日戦争勝利を正統性の根拠とする中国共産党には立つ瀬がありません。韓国と北朝鮮が反日でないわけはない。中国も朝鮮半島も、日本を徹底的に攻撃の対象としています。それが冷戦期には抑え込まれていました。冷戦が崩壊した途端に、安んじて日本を攻撃することができるようになったわけです。
国交樹立をうたった1972年の日中共同声明の交渉で議論されていることはただ2つ。台湾の帰属と戦時賠償です。歴史認識は一言も言っていません。

*1 パール判事の日本無罪論 小学館文庫。田中正明著。東京裁判にインドから判事として参加したパール博士が東京裁判は近代法の大原則である事後法の禁止にあたるとして違法性を追及した書。
*2 平和はいかに失われたか 原書房。中国に赴任していた米外交官、ジョン・マクマリーのメモとその解説。満州事変は国民党政府が挑発したことによって起きたなどとする論旨で、当時の複雑な極東情勢を分析している。
*3 紫禁城の黄昏 祥伝社ほか。清朝最後の皇帝で、満州国の皇帝ともなった溥儀のイギリス人家庭教師、レジナルド・ジョンストンが著した中国近代史の詳細な証言。
□保守の精神取り戻せ
--今の政治で保守が掲げていくべきものは何でしょうか
櫻井 憲法、教育、皇室の3つの価値観を標榜(ひょうぼう)する政党はどこにも存在しません。民主党は最初からそういう考えがありませんし、自民党も谷垣禎一総裁の下ではむしろ3つの論点から遠ざかる傾向にあります。同質性が高い。
誇れる国をつくりたいと切望し、次の世代の日本人、またその次の世代に恥ずかしくない国家をつくってバトンタッチしていきたいと考える人たちには支える政党がないのが現実です。国民は民主党を選んだつもりですけれど、実は社会党政権だったということです。一方の自民党は55年体制の下で極めて怠惰な政治を行ってきました。
渡辺 憲法改正は…。
櫻井 自主憲法制定の理想を1ミリたりとも実現しようとしなかった。「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍晋三さんも足を引っ張られてしまった。今の自民党は55年体制以降の自民党の延長線上にありますので変わる見込みはないでしょう。おのずと第三の道に行かざるを得ないのではないでしょうか。
渡辺 大連立でうまくいくかどうかわかりません。政界が再編成されて、本物の第三極ができるかどうか。保守の新しい軸をつくっていく努力はかなり長い時間を要すると思います。
--いつごろから堕落したとお考えですか
渡辺 70年安保闘争はまるで盛り上がりのない運動でした。その頃から日本の堕落が始まったと考えます。日米共通の敵はソ連ですから、政治的に安定し、産業技術も基礎技術も強い、もちろん米軍艦船の補修能力もある日本に基地を全国に置かせてもらって、そのことによって対ソ戦にアメリカが勝利できたというわけです。
冷戦下でのかりそめの平和の中で、自主憲法制定という保守が持っていたはずの精神までも、ぼろぼろになってしまった。左翼の減退と同時に保守も減退してしまった。そして冷戦が終わります。ここで一度立て直しをするための思想が生まれてこなかった。いまなお憲法の前文のような精神にこだわるところに、大きな問題があります。まさに日本人の知的な堕落なのでしょう。
櫻井 ハンチントンが世界を8つの文明に分けて解説しました(*4)。日本文明は日本一国として描かれていますね。優れた文明であったと自覚すべきだと思います。
渡辺 そうですよね、もちろん。
櫻井 まさにこの日本文明の価値観は、世界に一つの範を示し得るものです。国民が幸せであり、比較的差別も格差も少なく、人間社会の理想を実現したかのような豊かさの平等性が行き渡っていました。激しい競い合いを特徴とするかのようなグローバリズムの中にいかにこの穏やかな日本的文明を溶け込ませていくか。人類をより良い方向に引っ張っていくためにも、日本が日本的価値観を説明し、強く主張していくことが大事だと思います。

*4 文明の衝突と21世紀の日本 集英社新書。ハーバード大教授のサミュエル・ハンチントンは1993年に冷戦後の新秩序を解説した「文明の衝突」を発表。2000年に日本に焦点をあてた続編ともいえる本書を刊行した。


□日米同盟を強固に
--この1年に向けた決意のほどをお願いします
櫻井 世界に対してどのように日本の立場をわからせていくか。さまざまな提言と主張は日本語だけでなく英語、中国語、韓国語で発信していきたい。国家の情報発信と情報収集・分析機能を強めていくことが大事です。
渡辺 学生と毎日接していて思うことは、日本人が一番恐れなければならないのは日本人だと。領海を侵犯されても別にどうということもないという感覚で、屈辱を与えられ続けた次の世代が暴発してしまうのではないか。そのようにならないためにも日米同盟を強固なものにしていく。日米同盟がしっかりすることによって初めて日本がアジアに向けて凛(りん)たる国家であるということができるわけです。
民主党を見ていると、2国間同盟は古いという考え方、多国間協議がいいという思想です。これはダメです。利害を共有する2国間の同盟が本物の同盟であって、3国、4国となると機能しません。日英同盟がついえて、その代わり日英米仏の4国同盟で大正期から昭和前期の平和を守ろうとしましたが、4国同盟は一度も機能しなかった。6カ国協議はもう何の機能もしていない。北朝鮮に核開発の余裕を与えるだけの協議の場になってしまっています。
櫻井 日本社会には暴発するほどの元気もなくて、冒頭で申し上げたように液状化しつつあると心配しています。そんな日本人に、昔風に聞こえるかもしれませんが、「立派な日本人になることの大切さ」「戦後日本人が日本人でなくなったことの問題」を説きたいと思います。まず日本国が普通の民主主義国家の要件である外交力と軍事力を備えたまともな国になり、日本人がまともな日本人になることから再建が始まります。
そこにたどり着くための歴史教育とともに、国際社会を広く見て、その一員であるという意識を常に忘れないでほしい。健全なナショナリズムは健全な国際主義なしにはあり得ないことも強調したいですね。
渡辺 そうですね。

≪プロフィール≫
櫻井(さくらい)よしこ氏 昭和20年10月、ベトナム生まれ。国家基本問題研究所理事長。ハワイ大学歴史学部卒。クリスチャン・サイエンス・モニター紙東京支局員、日本テレビニュースキャスターなどを経てフリーでジャーナリスト活動を開始。第26回大宅壮一ノンフィクション賞、第46回菊池寛賞受賞。著書は「明治人の姿」「日本を愛すればこそ、警鐘を鳴らす 論戦2010」「民主党政権では日本が持たない」、共著として「中国はなぜ『軍拡』『膨張』『恫喝』をやめないのか」「日中韓 歴史大論争」など。産経新聞「正論」執筆メンバー。第26回正論大賞受賞。

渡辺利夫(わたなべ・としお)氏 拓殖大学学長。昭和14年6月甲府市生まれ。慶応義塾大学卒業、同大学院修了。経済学博士。筑波大学教授、東京工業大学教授などを歴任。日本安全保障・危機管理学会会長、外務省国際協力有識者会議議長。著書は「成長のアジア 停滞のアジア」(吉野作造賞)、「開発経済学」(大平正芳記念賞)「西太平洋の時代」(アジア太平洋大賞)、「神経症の時代」(開高健賞正賞)、「新 脱亜論」「君、國を捨つるなかれ」など。産経新聞「正論」執筆メンバー。



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